どくだみ茶をつくる

 梅雨前にかならずかなえたいことのひとつが、どくだみを干すこと。十薬ともよばれるどくだみの薬効が高くなるのは花が咲いているときだそうです

 どくだみには独特の臭気ともいえる匂いがあり、敬遠される向きもありますが、干すと匂いがうすくなり、さらに他のお茶とブレンドするとほとんど気になりません。年に数回「どくだみ茶がすごく飲みたい」と思うことがあって、そんなときはどくだみだけを濃いめに煎じて飲むのですが、匂いが気になるどころかとてもおいしく感じます。

 野草茶の材料は、できるだけ自分の身の回りで採取なり、栽培をするようにしていますが、ゆずっていただくこともあります。去年のどくだみは、山の上のお宅採らせていただきました。木陰のひんやりとした神聖さを感じる場所で、一本づつ手折った茎はすんなりと長く、どくだみ特有の香りさえも芳香のように感じたのでした。土地と植物は、わかちがたく結びついている、ということを実感したひとときでもありました。
 
 忘れがたいあの日から一年、「今年も摘ませていただけませんか」と山の上の方に伺ったところ、「今年はどういうわけかあまり生えていない」とのこと。なるほど、どくだみのように強い野草でも、年によって育ったり、育たなかったりするものなのだ、とひとつまた学びを得たその翌日、「探したらすこしはありました」と根付きのどくだみが、丁寧に束ねられて届けられたのでした。

 こんな風に、ご縁の風に乗って手元に届いた野草には、なにかしら特別な力があるようにも感じられ、その気配がうすれぬうちにと、手早く水洗いして、乾きやすいように何等分かに切って、えびらの上で干したのでした。「切ってから干すと乾きやすい」「根からすべて、全草をつかうといい」こんなことも去年どくだみを摘みながら教えていただきました。 陰干しのほうが良いと聞くこともありますが、この時期はいつ雨が降るかわからないので、天日干しに。

清潔な印象のどくだみ

 野草茶、と言葉にしてしまえばたったの三文字のことですが、いつ、どこで、どんなふうに摘み、干すか、というプロセスは、同じ作業に見えても毎回異なり、その時限りのものが仕上がります。また、乾燥して瓶につめれば保存がきくとは言え、同じ季節がめぐってくるまでに飲み切ることも大事なことのひとつだと思っています。なので、摘むのは多すぎず、すくなすぎず。多すぎるよりは、飲み切ってしまって残念に感じるくらいに。と思いながらも盛大に繁る野草を前に、興奮のあまり欲張ってしまうこともしばしば。学びはいつまでも続きます。
 
 そんなことをぼんやりと考えながら、季節の野草を摘めること自体が、祝福そのもののようにも感じられ、いつまでも野草と共にあることができますように、と願ったのでした。