ふきのとう

款冬華 (ふきのはなさく)

 二十四節気では大寒(だいかん)、一年でいちばん寒い季節です。72候では、 款冬華 (ふきのはなさく)。 款冬 (かんとう)とは、ふきの別名。 冬の氷をたたき破るという意味で、「ふき」にこの漢字があてられたとか。

 わたしたちの住んでいる山のふもとの気温は、町よりも低めです。それでもお正月が終わり、日常モードが定着した 1月20日ごろ になると、ちいさなふきのとうがあちらこちらで顔を出します。

 その年はじめてふきのとうを見つけた時、それは一年でもっとも心おどる瞬間かもしれません。ちいさいつぼみをひとつ、そのまま口にいれてみると、鮮烈な香りとからだを浄化するような苦みに、目が覚めるような気持ちに。春へと向かう力そのもの、の味。まだまだ寒い日々が続き、これから雪がふるかもしれない、そんな季節なのに、ふきのとうはいち早く春を先取りしています。

まずはてんぷらに


 冬の間に体にたまったものを洗い流す、そんな思いもこめて、初物のふきのとうは、ご飯の時間をまたずに、すぐにてんぷらにします。てんぷら、というと少しおっくうな向きもあるかもしれませんが、ほんの少しの粉に水、それから油があればできる、いわばインスタント料理。ちいさなふきのとうをいくつかならば、さらに手軽です。

つくりかた

 ちいさなボウルに薄力粉をカレースプーンに山盛り1杯ほど、コップに入れた水に氷を投入してつめたい水をつくります。ちいさいフライパン(なければ小鍋でも)に油を1.5センチほど入れます。上手なひとだったら鍋を傾けて揚げる前提で、1センチでも(逆にすぐに焦がしてしいまいそうな場合、油は多めで)。揚げ物は、少ない油でやると、その後の処理を含め、ぐっとハードルが下がります。油はできるだけ良いものをつかうことをおすすめします(我が家は長年平出油さんの菜種油を愛用してきましたが、昨年末に惜しまれつつお店をたたまれました。さて、これからどの油を選ぶか…が目下の課題)。

  ボウルに入った粉に冷たい水を入れて、粉っぽさが残るくらいにさっと混ぜます。混ぜすぎるとグルテンがでて、さっくり仕上がりません(さっくり仕上がらなくても、それはそれで沖縄のてんぷらみたいでおいしいのですが)。ふきのとうに衣をまとわせて揚げます。よい具合に揚がったら(表1分、かえして1分くらい)、油をよく切ります。さいしょの数粒は、ぱらっと塩を振って、台所に立ったまま、すぐに!食べます。ふきのとうのはじまりを満喫する瞬間です。いくつか食べて、すっかり気持ちが落ち着いたら、残りをゆっくり揚げながら、揚げたてを家族にもすすめます。

そのほかの食べ方

 てんぷらが王道ですが、揚げ物をしないのであれば、かるくオリーブオイルでソテーして塩をふるのが簡単でおいしいです。ふきのとうパスタもおいしい(多めのオリーブオイル、にんにく、刻んだふきのとうをさっと炒めて茹で上がったパスタとあわせる。パルミジャーノをけずっても)。それも気がのらなければ、こまかに刻んで煮えたちばなのお味噌汁の仕上げに散らしても、ごく簡単に野生的な香りがたのしめます。摘んでからすこし時間がたってしまってしんなりとしてしまったら、ふきのとう味噌に。刻んで多めのごま油で炒めて、味噌(好みでみりんや砂糖も)であわせます。ごはんのお供に、おむすびの具や、お茶漬け、焼き餅にのせたり、お酒のアテにもよいです。