らっきょう漬け完成

 5月下旬に仕込んだらっきょう漬けが仕上がった。3種類の方法で仕込んだ今年、結果はいかに。

 従来通りの「甘酢漬け」は輪郭のくっきりとした王道の味。発酵の小泉博士の下処理が楽な「乳酸発酵方式」は自然で上品な仕上がりとなった。「ひたすら塩漬け方式」は塩抜きに3日間かかるので、まだ味をみていない。

「甘酢漬け」
「乳酸発酵方式」と「ひたすら塩漬け方式」

  味を比較して来年はどちらの方法で漬けるか決めようと思っていたが、「おいしさ」という点では、 前者は「イメージ通りのらっきょう漬け」、後者はやや玄人好みという違いはあるにせよ、 両者甲乙つけがたい。しかし下処理の驚くべき簡単さと、調味料の使用量では断然後者の「乳酸発酵方式」に軍配が上がる。根も茎もとらず、薄皮も剥かずに洗って漬けるだけ、の方法はまさに画期的(食べるときに除く)。さらに砂糖と塩しか使わずに乳酸発酵で酸味を出すというなんという灯台下暗し的斬新さ!わが家はわりに値の張る富士酢や千鳥酢を使っているので、らっきょう1キロに対して酢500gは、結局ほとんどの漬け汁を処分することになるのにもったいないなあ、といつも思っていたのだ。

 あるいはあの漬け汁は再利用できるのだろうか?と思って調べてみたら、南蛮漬けなどの料理に使えるらしい。なるほど、らっきょう風味の「酢+砂糖」として見ればよいのだ。さっそく茗荷をさっと湯通しして漬けてみた。

 実は私自身はらっきょう漬けが大好きというわけでもない。あったらうれしく食べる(いただいたものならなおさらうれしい)という程度。それならなぜ作るのか。ひとつは、あの修行的とも言える下処理も含め、季節仕事として純粋に魅力的だから。らっきょう、という素材の地味さもいい。ふたつ目は、家族が喜ぶから。それに保存瓶にぎっしりとつまった乳白色のらっきょうの姿にはなにかしら胸を打つうつくしさがあるような。一度にたくさん食べるものではないので、しばらく楽しめるのも作り甲斐がある(とはいっても夏の終わりには瓶は空に)。あとは、おそらくこれが一番の理由だが、「らっきょうの季節がやってきた」という心おどる感覚。これは当然ながららっきょう漬けを作る前提でないと感じられない。保存食にはさまざまな魅力があるなあ、とあらためて感じ入る。

 らっきょう仕事の最大の難関はその下処理にある。それが楽なのであれば、いくらでも仕込めそうならっきょう漬け。まさかの下処理なしの方法に出会ったのが今回のブレイクスルーだった。今年のらっきょう漬けの総量は2.5キロ。まだ仕上がったばかりなのに、もう来年のらっきょう仕事を心待ちにしている。

「らっきょうができました。どんなあじですか」