1月の本


 本との理想的な出会い方は、たまたま入った本屋でたまたま出会うこと。もっというならば、つい最近友人が「よかった」と教えてくれた本、あるいはずっと気になっていた本に、本屋で「探していたわけでもなかったのに」、「偶然」出会うこと。

 さらには、その出会いを「読む運命」とみなして買うことができるか、というところが分かれ道。その本を持ち帰ろう、と決めた瞬間から、ひとつの冒険の物語がはじまります(日常生活にも冒険はあふれている!)。
 

1月の本

<買った本>
『わたしのせいじゃない―せきにんについてー』 

<読んだ本>
『ほがらか人生相談』 鴻上尚史
『アルケミスト 夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ
『極夜の探検』角幡唯介
『サラバ!』上下巻 西加奈子
『小澤征爾さんと、音楽について話をする』小澤征爾×村上春樹  
『仏教が好き!』 河合 隼雄×中沢 新一
『チベットのモーツアルト』中沢 新一
『虹の理論』中沢 新一

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『わたしのせいじゃない―せきにんについて―』

レイフ・クリスチャンソン・文 / にもんじ まさあき・訳 / ディックステンベリ・絵

高知の蔦屋書店のこどもの本コーナーの「ほんとうにたいせつなことコーナー」(と勝手に命名)の選書があまりにすばらしいので、担当の方に思う存分その感激を伝えたあと、その記憶ごと持ち帰ったスウェーデン発の一冊。

成熟した視点の欠けがちな日本社会の中にあって、「せきにん」について、わたしたちおとなだって、きちんとかんがえたことがあるのかどうか。こどもと一緒に読んで、そしてともにに考えつづけたいと感じさせるシンプルな一冊。こんな本を選んで、表紙が見えるように置いてくれる書店は地域の宝だとおもう。

『ほがらか人生相談』 鴻上尚史

今月のおすすめナンバーワン。最初の回答からノックアウト、その後もたたみかけるように、渾身の回答がつづく。これからの世の中をしあわせに生き抜くために、おとなもこどももぜひ、ぜひ読んでほしい。読後の充実感は保証します!
 

『アルケミスト 夢を旅した少年』 パウロ・コエーリョ著 / 山川 紘矢・亜希子訳

  これから始まるあれこれの、道しるべになりえる本。昨年末に友人にすすめられ、すぐに文庫版を購入。さらに前書きのついた愛蔵版を入手して、繰り返し読んでいる。示唆に富む、「運命を生きる」にあたっての道標、あるいは伴奏者となりうる一冊。

 じつは、大学生のころに読んだときに感想は「よくわかららなくて、退屈」だったことを覚えている。友人曰く「大人になってから読んだ方が響く本かもしれない」。

『極夜の探検』 角幡 唯介 文 /山村 浩二 絵

 絵本の体裁にもかかわらず、息を呑むような展開がつづく。親子で読む絵本がこんなにスリリングだとは!

 後日、原作の『極夜行』と『極夜行前』(こちらは文字の多い大人用の本)も図書館でリクエストする。4か月ものあいだ続く暗闇の氷の世界の冒険のはなし。もはや、正気とは思えない(つまり、天才)。

『サラバ!』 西加奈子

 「物語」の海におぼれるそうになりながら、ぐいぐい読み進めた。すごい構成力と体力。これだけのダイナミズムをリアリティをもって表現することのできる才能。他の作品も読んでみたい(でも日常生活に支障が出てしまいそうで躊躇する、と数年前に別の作品を読んだときも感じたことを思い出した)。  

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』小澤 征爾×村上 春樹

小澤征爾と村上春樹の組み合わせ、ただそれだけで中身を見ずに買った一冊。小澤征爾の指揮は、いつだったか公開リハーサルで聞いた一度だけ。そのときのことはあまり覚えていない。ブラームスのシンフォニーとかを、一度きちんと聞いててみたかったなあ、とおもう。

『仏教が好き!』 河合 隼雄×中沢 新一

 中沢新一の魅力は、その頭脳の明晰さとあふれる情熱の同居にあると思う。むずかしくてわからない部分も多いので(やっぱりちょっと理屈っぽいし)、やさしそうなところだけ読みながら「私にもっと理解力があったらなあ!」といつだって思うのだけど、それでも折に触れてつい手に取ってしまう言うに言われぬ魅力があることは確か。

『仏教が好き!』は「河合隼雄が中沢新一に仏教のことを教えてもらう」というスタイルなので、本番勝負のライブ感で突っ走りながらも、「その論理ついていけません!」ということがないのがありがたい(読者に親切)。中沢新一の「え、そこまで言ってしまうの!?」と本を取り落としそうになる、そんな挑戦的な姿勢にもしびれるし、河合先生の傾聴の姿勢には、いつもながら心を打たれる。