インド旅行記 1

  人生で3度目のインド。かつて半年ほど住んでいた南インドとはまったく雰囲気の異なる北の大都市、デリーへ。

 じつのところ旅はめっぽう苦手。変化が苦手、ということなのかもしれないけれど、日々の生活をそのまま旅先に持っていきたい、と思ってしまう。朝いちばんに飲むお茶や、3度の簡素な食事や、お風呂につかること、それから寝具の質感。

 さすがにすべて実現できるとはおもわないので、無理せずできる範囲で。まず最初のの関門は飛行機の中での食事。飲み物は常から水筒を持ち歩いているので言ってみれば普段の延長。国内線では荷物チェックのときにふたをあけてチェックしてもらえば済むし、国際線ではチェック直前で飲み干して(チェックする直前に液体を処分する場所もあります)、機内のドリンクサービスの時には「ホットウォーター」を入れてもらいます。

 問題は機内での食事。出発直前のカオスの中、自力での準備は困難を極めます。しかし、高知には携行食にもっともふさわしい文旦というものがあるのです!外の皮がとても硬いので、ぎゅうぎゅう押し込んでもまったく問題なし、食べるときも汁気がでないので手がべとべとになったりしません。

 文旦の中央に、水平にぐるりと深い切り込みを入れておいて、たべるときに指をいれてはがすようにむくと、お椀のような形状の器がふたつできます。片方に文旦の中身をおいて、もう片方に食べたあとの薄皮をおいて、食べ終わったら二つをドッキングさせてごみもコンパクトに。機内でもっとも不足するのはみずみずしさとダイナミズム。今回はスーツケースに10個詰め込んできました。

こんなふうに剥いて皮を器にします

 とはいえ出発からデリーのホテルに到着するまでおよそ18時間。やはり文旦と荷物にしのばせたハイピーナッツだけではしのぎ切れません。やはり、お弁当のよろこびがなくては!ということで、去年は空港まで一緒にきてくれた友人が、サンドイッチを作って持ってきてくれました。空港の中で、いちばん気持ちの良い場所を探して、夫と友人と3人で並んで食べた卵と、きゅうりと、ポテトサラダのサンドイッチ。記憶に残る最高のサンドイッチ。

 今年は3人のこどもたちを預けがてら実家に一泊したので、母に懇願して「お弁当とおむすび」を作ってもらいました。ちょうどステンレスのお弁当箱を2つ持っていたので、それにつめてもらいました。のりだんだん(ご飯、のり、かつおぶし、お醤油)と塩鮭、ほうれん草のおひたしに卵焼き。

 朝ごはんも食べずに早朝に出発して電車で空港に向かい、チェックインやら入国審査の長蛇の列を経て、ぎりぎりに飛行機に乗り込んだのがお昼前。周りの人が機内食を食べるのにあわせてお弁当を食べようとおもっていたけれど、あまりに腹ぺこだったので、離陸を待たずにお弁当をひらきました。

 疲れと、安堵と、空腹とがあいまって、これ以上はない、と思うほどのおいしさ。「お願いしたらつくってくれた」という満足感もあいまって、これぞ唯一無二の決して買うことのできないお弁当。写真を撮ろうとおもっていたけれど、そんなことをすっとばして、夢中で食べながら、インドへと旅立ったのでした。

その他の旅のお供、梅干し、柚餅子(ゆべし)、黒文字の枝(お茶用)