2020/8/28
まだ読んでいない方はこちらから→ インドでシク教徒に会う①「大雨の中で立ち往生」
シク教の寺院へ
ホテルから空港までは40分ほどだが、途中何が起こるかわからない(高速道路の真ん中でパンクとか、通行止めとか)。十分に余裕をもって到着するようにホテルを出発する。あとは空港にたどり着けさえすれば(たぶん)大丈夫。なかばほっとした気持ちでいたのだが、ふと魔が差して「近くにあるなら、シク教の寺院に行ってみたい」と口走る。
「行ってみたいの?オーケー」とバルジ―トに連れていかれたのは、立派な寺院。頭に布を巻き付けたひとがたくさんいる。清潔で、きちんと管理されている印象。ヒンズー教寺院よりもずいぶんすっきりしていて、荘厳。
バルジ―トの顔なじみがたくさんいるようで、近くにいるひとに「この人たちを案内してあげて」と言ってくれる。言われるがままに靴を預けて番号札をもらい、手と足と口を水ですすぐ。「頭に布を巻いて」と言われて、わたしはちょうど巻いていたストールを巻き付けたが、夫は「え、ぼくも?!」。かばんをがさごそさがしてマフラーをみつけ、それをなんとか頭に巻いた姿はいかに間に合わせ的で滑稽だったが、シーク教徒のみなさんは気にする風でもない。人のことは気にしない。さすがインドである。
無料食堂の台所
礼拝堂を見学し、一通りの説明を受け、長い廊下をあるいていたら、左手に体育館のような、集会場のような建物がある。「この場所はなに?」と聞くとどうやら食堂らしい。
「毎日何千人もここで食べる。朝昼晩、用意される。無料。他の宗教の人でもOK」。無料食堂?と耳を疑う。布教の一環かとおもったら、そういうわけでもないらしい。かつてヒンズー教の寺院で「ヒンズー教徒以外はここから立ち入り禁止」と邪険に扱われたことを思い出し、シク教は寛容なんだなあ、と思った。
「ぜひ台所を見せてほしい」とお願いして、中に入らせてもらう。広い建物の一角がそのまま台所になっていて、信じられないくらい大きな鍋がいくつも火にかけられている。小学校のころ見学した学校の給食センターより大きい。
床に置かれたバケツには山盛りのにんにくと生姜のみじん切り、それからトマトの角切りが入っていた。そのむこうのたらいには山ほどのパニール(インドのチーズ)。パニール?と一瞬目を疑った。パニールは値段が高い。無料で提供するなら当然素材が安価でボリュームもある豆カレーだと思っていたので意外だった。それもこんなたくさんの量。もしかしたらチーズ会社の社長がシク教徒?この寺院の立派さ、無料のふるまいご飯、紳士的なふるまい、シク教徒に富裕層が多いというのもうなずけた。
「誰でも食べられるってわたしたちでも?」と聞くと「もちろん」。本物のパンジャブ料理にちがいない。夕食の時間は?と聞くと、2時間後。わたしたちはあと10分でここを出て空港に向かわなければならない。なんてこと!と思う。この場所のことを知っていたら、毎日通って台所を眺めることができたのに。バルジ―トの口利きで、もしかしたら調理の手伝いをさせてもらえたかもしれない。そして「本物のパンジャブ料理」を食べられる。ダルマッカニー(生クリーム+豆)とかシャヒパニール(トマト、生クリーム、カシューナッツ、パニール)みたいな、生クリームの入った濃厚なグレービーカレー。
「聖者の食卓」
夢みたい、と思った。今回のインド旅行の一番のハイライトはこの寺院の食堂だったかもしれない。たった5分の見学。そういえば、と思った。インドで無料の食事が振る舞われるドキュメンタリーがあったではないか。そう、『聖者の食卓』! 「 毎日、10万人分の食事が300人のサバダール(ボランティア)の手によって用意され、巡礼者や旅行者をはじめ、人種も宗教も関係なく、訪れた人すべてに無料で提供されている」という。
この映画の予告編を見た時には、「インドで毎日10万食のごはんが無料でふるまわれるだなんて、聞いたことないなあ」と思っていたけれど、なるほど、これはわたしたちの住んでいた南インドから遠く離れた、パキスタンに近いパンジャブ地方のシーク教総本山での話だったのだ。
大雨の日に出会ったタクシードライバーを通じてのドラマティックな展開。シク教、寺院、無料食堂。彼のおかげで、わたしたちの世界はとたんに広がりはじめた。そして、インドの旅の最後に、大きな贈り物をもらったのだった。
次にインドに戻ってきたら、一も二もなくあの食堂に行こう、と心に決める。けれど、案内してもらった寺院の名前も、場所もわからない。それでも、きっとたどり着けそうな気がする。「寺院の食堂」という手がかりをわたしたちに手渡して、バルジ―トはターバンを巻いて、今日もデリーの町で車を走らせているのだろう。
インド旅行記 1
インド旅行記 2
インド旅行記 3
インド旅行記4
インドのチャイ屋
インドでシク教徒に会う①「大雨の中で立ち往生」
Pingback: インドでシク教徒に会う①「大雨の中で立ち往生」 - 食手帖
Pingback: batmanapollo.ru
Pingback: russianmanagement.com
Pingback: site
Pingback: Link
Pingback: psy
Pingback: site 2024
Pingback: Tucker Carlson - Vladimir Putin - 2024-02-09 Putin interview summary, full interview.
Pingback: Tucker Carlson - Vladimir Putin
Pingback: batman apollo ru
Pingback: shorts
Pingback: yaltalife.ru
Pingback: film kinogo
Pingback: rasschitat dizayn cheloveka onlayn
Pingback: printsipy forda
Pingback: dizain-cheloveka
Pingback: biznes kniga
Pingback: 10000
Pingback: 9gm.ru
Pingback: hdorg2.ru
Pingback: raso.su