ポテトサラダはごちそう

 ポテトサラダは大ごちそう、ここぞというときに全身全霊をかけてつくる。もともと「洋食」というジャンルが好きで、洋食屋さんの、メンチカツにポテトサラダプラスごはん(デザートは蒸し焼きのプリン)、みたいな組み合わせに興奮する。もし、おいしい洋食屋さんが近くにあったら、きっと足しげく通ってしまうとおもう。

 副菜的扱いを受けることが多いポテトサラダだが、わたしにとってはメインディッシュ。ポテトサラダを作る日は、ご飯とみそ汁、そして大きな器に入れたポテトサラダをどん、とテーブルの真ん中に置く。

 作り方。まず、じゃがいもを皮ごと大きめの一口大に切り、底の面積のひろい鍋に皮を下にしてしきつめ、上から塩をふる。塩が流れないように鍋肌から水を底から2センチくらいまで注ぐ。ふたをして中火にかけ、沸騰したら弱火に。たびたび蓋をあけて様子をみながら、フォークがすんなり入るようになったらふたをすこしずらして湯を捨て、そのまま鍋を前後にゆらして、水分をざっととばす。ボウルにあけ、すぐさまつぶす。同時に 塩、酢(ワインビネガー、梅酢、柿酢などでも) で下味をつける。さらにオリーブオイルを加えて水分を飛ばすイメージでよく混ぜる。ここまでで、味の3分の1をつけるイメージ。

 玉ねぎはできるだけ薄く切って、塩もみするか水にさらす(赤玉ねぎだと甘くて辛みがすくなくおいしい。色もきれい)。わたしは玉ねぎはたっぷりいれるのが好き。きゅうりもあれば塩もみしておく。たまねぎときゅうりの両方があったらいいけれど、どちらかでもいい。

 じゃがいもがすっかりさめたら、しっかり水気を切った玉ねぎときゅうりをいれ、黒胡椒とマヨネーズを入れる。下味はわりにしっかり目につけておいて、マヨネーズのは気持ち少な目に。

 と、ここまでが「基本のポテトサラダ」。シンプルで十分においしいけれど、たとえば、茹で卵をざっくりとフォークでつぶしたもの、かりっと焼いたベーコンの細切り(黒胡椒をしっかり振って、つぶしたじゃがいもに油ごと混ぜ込む)、イタリアンパセリやディルの刻んだのをいれたらいっそうおいしくなる。

注意事項は、茹でた玉ねぎや人参、りんごを入れないこと。あくまで、すっきりと仕上げたい。あれは給食のポテトサラダだっただろうか、これらが入っていると心底がっかりしたものだった。

 できたてもふんわりしていていおいしいし、冷蔵庫に一晩入れてきっちりと冷やし固めるのもいい。後者の場合はサンドイッチに最適で、レタスやきゅうりをパンの一方にのせて、塩を振ってオリーブオイルをひとまわし(この工程を省くと、わずか水っぽい味になる)、もう一方にポテトサラダをたっぷりのせてつぶした黒胡椒を多めに振る。食べる前に合体させると、世界でいちばんおいしいサンドイッチになる。ポテトサラダをのせるまえのパンに、粒マスタードや和辛子を塗れば、さらに完成度が上がる。

 作ったその日と翌日と、おいしさがまるでちがうこと(両方おいしい)、晩酌のお供や、いっそのことトーストにのせておやつにしても。ちょっとお腹がすいたときに、冷蔵庫を開けて、保存容器から大きいスプーンたっぷりひと匙分をすくって食べるのも自由でいい。

 ゆでてつぶして混ぜて、と一見おおらかに作れそうなポテトサラダだが、私の中では緻密な料理のトップリストに君臨している。ノスタルジーをベースに、今の味覚のストライクゾーンに味を決める。タイミングとバランスが決め手。なので、他のものと並行して作らずに、ポテトサラダにだけ集中するのが秘訣だと思っている。