インド旅行記 2

 旅立ちから18時間、時刻は夜8時、ようやっとデリーのホテルに到着。

世界中がコロナウィルスの動向に注目しているこの時期、もしかしたらエア・インディアの機内は空いてるかも….?と思ったが、ほぼ全員インド人で満席。日本人の姿はちらほら。みなしっかりとマスクをしている。日本人へのビザ発給が2日前に停止されたり、インド入国時に健康チェックが課せられていて、場合によっては入国できない、などと聞いていたので、さて、どうなることかと思っていたが、発熱チェックのみですんなり入国(そしてその2日後にビザは無効、日本人入国が制限されることに)。

 日本でもインドでも、とにかく出入国の行列が長くて、かなり消耗しているとはいえ、無事にたどりつけたことに安堵する。これから1週間、インドでの日々がはじまる。

 とりあえずシャワーを浴びてすっきりしたいところだけれど、受付には「ホットウォーター 6AM--10AM 受付に電話して30分待つ」と書いてある。ホットウォーター、はシャワーのこと。ある程度の手続きを踏まないと使えないようだが、去年はほとんどお湯が出ずにやむなく水浴びしたりしていたことを考えれば(寒かった…..)、オーガナイズ度はかなり上がっているように見える….とはいえ、ここはインド、書いてあることが本当かどうかは誰にもわからない(お湯はあったけどなくなりました、とか機械が壊れました、などは想定内)。なにごとも防ぐことはほぼ不可能なので、とにかく成り行き任せにするよりほかない。

 シャワーは明日の朝のたのしみにするとして(どうか熱いお湯が出ますように!)、とりあえず、インドに馴染むためにはインド食、ということで去年も通った近所の食堂へ向かう。去年いたチャパティ焼きのネパール人のおじさんがいるかと探したけれど、姿が見えない。今日は休みなのか、転職したのか、あるいは国に帰ったのか。去年、あの快活でひとなつっこい様子にずいぶんとほっとさせてもらっていたことを思って、なんとなくしんみりする。

ホテルの近くの通り。夜だとやっぱりすこしどきどきします。

気を取り直して食事を注文。夫が「パニール(インドのカッテージチーズ)を食べたい!」と主張するので、パニールのカレーと、野菜のカレー、それからチャパティを頼む。とにかく胃腸を疲れさせないのが大事!とこれまでの経験から学んだので、初回は軽めにと、カレーは両方とも「ハーフ」を選んだのに、けっこうな量でおののく。それでもひとくちたべれば、インドが体を駆け抜ける。表面に浮くほどの油、スパイスも、濃厚さも、塩味も、「つよく、つよく、つよく、その先においしさがある!」といった感じ。普段はお味噌汁とか、野菜を焼いたり蒸したりゆでたりしたものばかりを食べているので、すぐにでお腹がいっぱいになってしまうのがなんとも残念。もっとこの味を感じ続けていたいのに。

ああ、インドにやってきたと思わせる強烈な魅力ある味。

 水は持参したものを飲むけれど、添えてある生の玉ねぎも、レモンも、大根も食べる。あの油の強さには、生の玉ねぎとレモンがほんとうによく合うので、多少のリスクは取る価値はある。とはいえ、掘っ立て小屋のカオスなこの食堂、去年滞在時の初日には「こんなところではおそろしくてとても食べられない」と思っていた。があまりにおいしそうなので、おそるおそる注文をして、落ち着いてから回りを見回すと、意外と身なりのよい人が出入りしているので衛生にもまずまず気を使っているということがだんだんわかってくる。それでも給仕のお兄さんが目の前でステンレスのお皿やらスプーンやらを紙ナプキンみたいなものでごしごし「こんなに衛生に気を付けていますよ!」というそぶりで拭いてくれるのはいいけれど、拭いた直後に素手でべたべた触っている….嗚呼!

お店はこんな感じです。よくよく見ると道端の屋台より高級ということに気づく

 その店の一角にある、タンドールコーナーには、いろいろな肉が串刺しになっている。去年から一回食べたいとおもって、何度も見に行ったけれど、勇気がないのと値段が高いので(とはいっても千円以下。それでも野菜料理の数倍)一度も食べられなかった。今年こそは!と思って熱心に眺めていると、おじさんがひき肉を屋外で串にこねつけている。なんでもシーク風のケバブだとか。おいしそう…と同時に「このお肉、どのくらいのあいだ常温に….?」という疑念が湧く。それでもやっぱり食べてみたい。チャレンジなしには、味覚はひろがらない!しかし初日から肉はあまりにリスキー。最後の夜にでも注文してみよう、と思う。

物欲しげにのぞきこんでいるのがわたし。しましまシャツのおじさんの串はマトンだそう

 暗闇の中に、ぽつぽつとひかる電球の下で、大きな鍋からつぎつぎと食べ物がよそわれ、一日の終わりを迎えつつある人々に手渡される。インド人はほんとうに食べることが好きらしい。老いも若きもどこでも意欲的に飲んだり食べたりしている。たべることは生きること、そんな勢いに満ち満ちた、夜の屋台通りを、日本よりはずいぶん温かいな、と思いながらそぞろあるいたのでした。

食事の最後にだされるフェンネルと小粒の氷砂糖。この感覚はいまだつかめず、なぜ?の味。