らっきょうを漬ける

 初夏の仕込み仕事のひとつがらっきょう。梅仕事の前にぜひとも取り組みたいことのひとつです。さっぱりとしたらっきょう漬けは、外がまだ明るい夕暮れどきに、冷えた日本酒やビールとともに小皿に数個のせれば、簡素ながらうれしい晩酌に。おかずをつくる元気がないときは(特に夏の暑い盛りには夕方にはぐったり)、ご飯とお味噌汁、納豆とらっきょう漬けでごちそうです。 こどもたちも大好きで、「いくつ食べていい?」とたびたびせがみます。 お弁当のすみにひとつ、ふたつ入れるのも好きです。

 去年はけっこうたくさん作ったのはずなのに、大人もこどもも毎日のように食べるので、夏が終わる前に底をついてしまいました。本当は一年分、それが無理なら半年分はつくりたいところですが、目の前に立ちはだかるのは、皮むきにかかる、気の遠くなるような手間!らっきょうのサイズや手伝ってくれる人数にもよるのですが、小粒のものに一人で立ち向かうと、仕上がり1キロほどにかかる時間は3~4時間。今回は、夕食後からはじめて、終わった時には深夜。手はしびれて頭もぼうっとしていましたが、夜の灯りの下でひかる、つややかならっきょうの山を眺めるときの達成感と充実感。これもらっきょう仕事の醍醐味です。

今年も「らっきょう漬けますか」と掘ってくださいました。大きさがまちまちなのがうれしい。

 らっきょうは、まず下漬け(塩漬け)をしてから本漬け(甘酢漬け)に入ります。下漬けをすると一年経ってもぱりぱりとした食感が保たれるそうです。わりに手間を惜しむたちではあるのですが、このひと手間には必然を感じるので、省かずに粛々と作業します。

 下漬けは、むいたらっきょうに重量の10パーセントの塩をまぶし、びんに入れてひたひたになるまで水を入れてふたをします。常温において、数日で乳酸発酵が始まるので、2-3日に一度瓶のふたをあけてガス抜きをします(ふたを開けるとかなり強烈な匂いがしてたじろぎますが、心配しなくて大丈夫)。10日~2週間で完了。

 次に塩抜きをします。ボウルに水を入れ、時々水を入れ替えながら半日~1日くらい。時々食べてみて、ちょうどよい塩加減になるまで。ちょうど良いってなかなか難しいのですが、しょっぱすぎず、まあ、こんな感じ?という程度でOK。ざるにあげてしっかり水気を切っておきます。

 本漬けの甘酢は、酢と砂糖と唐辛子。それらすべてを水を鍋で煮立て、冷めたららっきょうとともに瓶に入れ、ふたに日付を書いたメモを貼って、常温で保存します。10日くらいから食べはじめることをはできますが(まちきれなくて、つい)、おいしくなるのはひと月ほどたってから。甘酢の割合は好みで。レシピはあくまで参考に(自分の味覚を他にゆずり渡さなくてもよいのです)、味見しながら自分で決めることで、次回に生かせる味になると思います。

 いきなり甘酢で漬ける方法もあり、簡単に早く食べ始められるようなので一度試してみたいと思いつつ、やはり下漬けの乳酸発酵のプロセスから生まれる重層的な風味に惹かれます。調べてみると、お酢を使わずに乳酸発酵だけで酸味を出す方法もあるとか。次回はぜひその方法でやってみたいと思います。
 

2020年初夏 覚え書き

*2リットル瓶使用

<下漬け>
らっきょう 1250g(皮をむいた量)
塩10%

<本漬け>
酢 450cc
水  400cc
砂糖 130g
赤唐辛子 1本