味噌をつくる

 毎年冬になると、「味噌は寒仕込み(小寒から節分までの30日間の寒いうちに仕込むのが適している)」のことばが頭をよぎります。お正月が過ぎるころには、「寒いうちに味噌を仕込まなければ」と思うのですが、ついつい先延ばしになってしまいます。寒仕込み、寒仕込み、と呪文のように思いながらも「でも花仕込み(桜のころに仕込む味噌)とも言うし、まだ大丈夫」と自分に言い聞かせながらすごす春もやはりなんだかんだとあわただしく、結局は去年も5月ごろに仕込んだように思います。

 今年も冬が終わり、春が過ぎ、ようやくエンジンがかかったのが、味噌の残量が2キロを切った五月の半ば。我が家のみそ汁ライフが危機に!とお尻に火がついたのでした。思えば3月はインドへ出張、帰国後はコロナ問題で学校が休校(=こどもたちとの混沌の日々)、とても味噌づくりどころではありませんでした。保存食づくりには、心のおちつきが必要なのだ、とあらためて思いました。

 材料は、大豆、麹、塩といたってシンプル。まずは麹つくりから。去年はじめて麹を作ったのにすっかり味をしめてしまいました。期限の切れた古い麹菌をつかってのイチかバチかの麹づくり(失敗すると2.5キロのお米が無駄になってしまう!)、倍量をつかったのがよかったのか、無事完成。ほっと胸をなでおろします。

 麹づくりは、実働は2-3時間とはいえ、5日の間、日に幾度も温度を確認したりと「心は常に麹に向かう日々」となり、緊張感もあります。でも、でき上った麹のもわもわした姿と甘い香りに包まれると、やっぱりつくってよかった、と思うのです。直接入手しづらく(だいたいネット注文)、価格もそれなりの麹が、ほぼお米代だけでできるのも大きな魅力のひとつ。味噌だけではなくて、甘酒もつくれるし、豆板醤や三五八漬け、べったら漬けの材料にもなるので、麹が自分でつくれると、世界がぐっとひろがります。

麹ができあがりました。いい匂い。

麹ができたら、ひといきおいて、味噌づくりに取り掛かります。
家でいちばん大きな鍋でえんえんと大豆を煮て、すんなり指でつぶれるくらいになったら(だいたい4時間)つぶします。塩と麹を混ぜておいた「塩切り麹」としっかり混ぜ合わせ、テニスボールくらいの団子にして、容器に投げつけるように入れて(空気を入れないため)、さいごに塩をふってふたをします。一般的にはラップをつかうようですが、今年は竹の皮でふたをしてみました(抗菌作用があるらしい)。さらにその上におろしわさびをのせるとカビが生えにくくなるそうです。カビはうれしくないけれど、気温湿度や熟成場所の環境によってはやむを得ないと思っていて(我が家はかなり生えやすい)、「カビがはえてもとれば平気」くらいの気持ちでいた方が気楽でいいと思っています。

25リットルの大鍋で茹でます

今回は一度につき、出来上がり量8キロ計算なので、

乾燥大豆 1760g
麹  2キロ
塩 860g(塩分11.3%)

今年の仕込み目標は25キロなので3回仕込む計算です。2回目がちょうど仕込みおわったので、あと残るは一回!(ですがやや息切れ気味….)

麹、味噌づくりにいつも参考にさせてもらっているのがもやし工房さんのサイト。時系列の表も、作り方も感動的にわかりやすく、材料計算機能までついています。そしてなによりも「やってみよう!」と思わせてくれるような伝え方に毎回勇気をもらっています。

 手前みそとはよく言ったものですが、作ってみると、ほんとうに「いちばんおいしい」と感じます。秋頃の仕上がりを想像しながら、どうかうまくゆきますように、と思いながら、ずらりと並ぶ、味噌のつまった容器を眺めたのでした。

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