季節の野菜便

 高知に移住してから6年間ほど、「季節の野菜便」という野菜セットを作って細々と発送していました。近所の有機農家さんや、直売所で朝仕入れた季節の野菜を小包にしてその日のうちに送る、と趣向の野菜セットです。

 「知り合いの生産者さんのところで採れすぎた野菜」や「高知ならではの野菜や柑橘」「新鮮でおいしい野菜」がたくさんあるので、ぜひ高知県外の人にも食べてもらいたい!という思いで始めました。

発送の度に新しい学びや気づきがあり、わたし自身とても楽しんでお送りしていたのですが、数年前、気候が不安定で野菜がたくさん採れなくなってきたことで、仕入れが難しくなり、一度区切りを付けました。

 その時にぼんやりと「いつか自分が育てたもので野菜便をやってみたい」という夢を描きました。畑はずっとやっていたけれど、我が家の分にも全然足りないくらい。野菜セットおまけにほんの少し入れる程度でした。ちいさな玉葱数個や、オクラ3本…ほとんどおままごと状態です(笑)。 それでもやっぱり自分の野菜を小包に入れてお届けしたうれしさが原点です。

 我が家の生姜は種をついで4年目。ほぼ自給できるようになりました。今年はコンポストから芽が出た菊芋がとたくさん採れそう。チャーテと呼ばれる瓜もたくさんなっています。去年からは雄一郎さんが畑に目覚めて、私よりも、ずっと上手に育てています。

 そんなある日のことでした。突然「あ、野菜セットがいまなら作れるかも!」と思い立ち、畑に出てあちらこちらをきょろきょろしながら野菜を収穫。ハーブも含めて8種類ほどが集まったので、箱につめてみました。

お入れしたのは、菊芋、万願寺とうがらし、ゴーヤ、チャーテ(ハヤトウリ)、唐辛子、生姜、レモングラスにカレーリーフ。おまけに良心市で買った柿をひとつ入れました。

久しぶりの野菜便がこんな風にできるなんて。突然夢がかなうことってあるんだなあ、と思いながら野菜が入った箱をかかえて郵便局へと向かったのでした。

<野菜の食べ方>

【菊芋】
フライパンに油やや多めで蓋をしてじっくり蒸し焼きが一番簡単。お味噌汁の具やきんぴらにしても。ポタージュや菊芋チップスもおいしそう。

【万願寺とうがらし】
「とうがらし」と名がついていますが、辛くなく、ピーマンやししとうに近いです。油多めのフライパンでしっかり表面を焼き付けてから蓋をしてじっくり蒸し焼きに。途中で塩をすこし振って、最後に酒と醤油で仕上げます。生姜醤油も良く合います。参考レシピはこちら(ピーマンを万願寺とうがらしに変えて、レシピより火を入れる時間を長めにしてくったりするまで焼くと甘味が出ます)

【ゴーヤ】
ゴーヤチャンプルーが王道ですが、わたしはこの夏何度もアチャールを作りました。レシピはこちら

【チャーテ(ハヤト瓜/インド瓜)】
高知ではよく食べられる野菜です。南インドに住んでいた時にも八百屋さんでよく見かけました。加熱しても生でもOK。高知の人に食べ方を聞くとほぼ全員が「豚肉と一緒にいためる」とおっしゃいます。皮をむいて薄切りにして塩して絞ってから、柿のうすぎりと一緒にオリーブオイル、レモン(酢)、塩胡椒で味付けしたサラダも毎年作ります。ごく淡泊なので、野菜スープの具にしてもいいし、生姜多めのみそ炒めもおいしそう。我が家ではパスタの具にもします。

万願寺とうがらしの蒸し焼き(左)と柿とチャーテのマリネ(右)
チャーテと青菜、枝豆のパスタ。野菜はすべて畑から。

【生姜】
新生姜に近い感じなので、生でも軽やかに食べていただきたい(もちろん加熱もOKです)。最近のヒットは、千切り生姜を醤油で和えて、鶏ひき肉入りの炊き込みご飯にたっぷりのせる食べ方。小さな瓶に千切り生姜を入れ、醤油を注いでおけば「生姜醤油」がすぐに使えて便利です。

【唐辛子】
すぐに使わない場合は薄切りにして醤油や酢につけておくと重宝します。
小瓶にニンニクの薄切り、ナンプラー、レモン果汁、砂糖を混ぜて、一緒につけておいて生春巻きや、エスニック料理にぴったりです。

【レモングラス】
フレッシュなままお茶にしても、紐でしばってつるして乾燥させておけば保存がききます。鶏肉を茹でるときににんにくと一緒に鍋に入れるとエスニックな雰囲気に。

【カレーリーフ】
南インド料理に欠かせないカレーリーフ。カレーにも、炒め物にもなんにでも入っています。熱帯の植物なので、日本ではなかなか入手が難しいので、庭で育てています。ポリヤルは南インドの野菜のスパイス炒め。レシピにあるマスタードシードやウラドダールがなくてもおいしくできますので、ぜひ試してみてください。レシピはこちら

【あわせ野草茶】
茶林草/はぶ茶/黒文字

ポットに沸騰した湯を注ぎ、蒸らします。
茶葉や湯の量、蒸らし時間は自由ですが、
茶葉大きく一つまみ、湯300ccで蒸らし3分程度を試してみてください。
軽く煮だしてもよいです。

北の果てから鮭

網走の友人から、季節ごとに小包が届く。
箱をひらくとフレッシュな土地の産物に手製のお菓子やパン、それから手紙が入っていて、毎回心おどらせながら箱をひらく。 こちらも高知のあれこれを小包にして送る。 北海道と高知で行き交う「小包文通」。

9月には鮭が届いた。「今回は雌です!お腹も出さずにそのまま送りました」というメッセージはつまり「いくらが入っています」ということ。

聞けばご家族が釣った直後の鮭を、すぐに冷凍便で送ってくれたとか。お礼の電話をかけると「これまでで一番新鮮だと思います!」とはずむ声で教えてくれた。

特別支援学校に通う高2の息子は大の魚好き。「秋鮭、去年よりも少し早いね。いくらがきちんと成熟しているか…」とつぶやきながら、ひらいたお腹にぎっしりのいくらを目にして歓声をあげた。

さばいたその夜は、骨まわりの身を焼いてほぐして「鮭のおむすび」。翌日は、いくらの醤油漬けどんぶり。身の部分はすべてスモークサーモンに。

スモークサーモンの作り方:
鮭の切り身に4%の塩と2%の砂糖、胡椒をまぶして一日おき、表面を水で洗い流してから網に乗せて冷蔵庫で乾燥させる。桜の枝などで数時間燻し、冷蔵庫で1日熟成させればできあがり。

天然の鮭にはアニサキスがいる可能性があるので、鮮度の良さと、冷凍で数日置いてあることが条件。それでも「大丈夫かな…」毎回すこしどきどきしながら食べる。

1週間かけてできあがったスモークサーモン。そのまま食べたり、サンドイッチにしたり。息子はことあるごとに「スモークサーモン食べていい?」と聞いてくる。

さんざん楽しんだ後の、最後のスモークサーモンは、平日の昼間にパスタにした。玉葱としめじ、ローリエを炒め、ゆであがったパスタを入れてスモークサーモンを加える。すだちを絞り、生の玉葱のスライスをのせ、黒胡椒は多めに。

鮭一匹の最後のひとさら。
秋になると北の果てから届く鮭。いそいでさばいて、できるだけ保存のきくようにして、数週間かけて食べ続ける。そのプロセス自体が喜びなのだと、やっぱり今年もおもったのだった。