2020/4/15
春は種まき。準備のよいひとは冬のおわりに土を耕して、肥料を入れて、準備万端で種まきの時期を迎えますが、わたしの畑は準備とはおよそ無縁です。思い立ったその時に、土を掘り返して、かたまりを手でくずして、表面をきれいにならし、肥料は入れずに種まきします。肥料を入れないのは、肥料がないから。いつか埋めた生ごみが肥料になっていることもありますが、どこに埋めたか忘れてしまいます。枯れ葉が朽ちた腐葉土を近くでみつけたり、薪ストーブを使うお宅からいただいた灰があったりすればそれを適当に入れますが、たいがいはすぐに種まきしてしまいます。
種はまきそびれて残っているものを使います。保存状態も良いとはいえず、2年前の種などの発芽率はぐんと落ちているはず。だからといって処分してしまうのはあまりに忍びなく、はたして芽が出るかどうかも定かではないその種をかまわずまきます。外国のめずらしいかぶ、ねぎ、ほうれんそう、それからロメインレタスとにんじん。どの芽が出るのか、出ないのか、くじびきみたいでおもしろいし、発芽しなかったら別の種をまたまけばよいだけ、と思っています。
自分で採取した種もいくらかあります。コリアンダーの種は大きな瓶にたっぷりと、おそらく数千粒あるので、ところかまわずばらまきます。そうすると、ちょうどタイミングと相性が合った場所からだけ、いくらか芽を出します。
あとはいただいた苗の定植。じつは、これが一番成功率が高いのです。いつもお世話になっている方(苗づくりの名人)が、ご自分が定植した後のあまった苗をゆずってくださるのです。リーフレタスと玉レタスの苗をたくさんいただいたので、せっせと土をほりかえして、ひとつ、ふたつと何日もかけてえんえんと植えました。
こうやって、一日のうちの数十分(ときに時間を忘れて数時間)地面を掘り返して種を植えていると、だんだんに畑がひろがって、風景が変わってゆきます。そうこうしているうちに、最初に蒔いた種から芽がでたり、こぼれ種から育ったカモミールがちいさな花を咲かせたりします。
端境期であまり野菜が採れない時期とはいわれていますが、そもそもわたしの種まきの時期はいつも遅れているし、前述のとおり肥料もほとんどやらないので、成長も信じがたいほどゆっくりで、土地のみなさんの収穫がとうにおわってからようやくちらほら穫れ始める感じです。
それでもちいさなリーフレタスはみずみずしく、ほんのわずかとれはじめたスナップえんどうは砂糖のように甘く、摘みとったそばから生でかじります。こぼれ種から偶然芽が出たコリアンダーは、どこに生えているかわからないので、草むらのあちらこちらを探してまわります。効率とはまったく無縁ではありますが、だからこそ、遊ぶような気持ちで畑しごとをする日々です。