2020/8/7
夏といったらすいか。今年は大きな冷蔵庫を買ったので、思う存分すいかを買うことができる。 つい最近までは単身者用の小型冷蔵庫をつかっていたので、すいかどころか野菜ひとつ入れるのにも苦労していた。入っていたのはほとんど調味料と保存食。それもゆずの砂糖漬け1キロに味噌2キロに…というから冷蔵庫というよりはむしろ保存庫の様相を帯びていた。高知は湿度が高く、いま住んでいる家は夏場かなり暑くなるので、醤油さえも常温だと品質が劣化してしまう気がして冷蔵庫に収めている。
そんなわけで、去年までは食べ切れるサイズの小玉すいかしか買えず、ぱんぱんに皮が張った立派な大玉すいかを見る度に、いいなあ、と思っていた。
すいかのはじめの一歩は、おいしいものを選ぶこと。当たり前のようでいてなかなか難しい。手法はオーソドックスなトライアンドエラー方式。直売所だと値札に生産者さんの名前が書いてあるので、それを手がかりに色々な人のを食べてみて「この人!」を探し出す。作業は地道で、とにかく食べるしかない。そのとき、「すごくおいしいかどうか」と考えながら食べるとよくわからなくなるので(「すごくおいしい」ものは滅多にない)、むしろ消去法で。「この人のはおいしかった!」というよりも「この人のはもう買わなくていいかな」という判断の方が経験的に精度が高いように思う。自分にフィットするものよりも、むしろフィットしないものの方がわかりやすいのと同じ仕組みだろうか。
ということで、だいたい「消去リスト」(とくくってしまうのも作り手の方に申し訳ない気がするが)に載っていない未知の生産者さんのものを買うことになる。もし「だれそれさんは減農薬」とか「このひとのはおいしい」という情報が耳に入ったら、買って食べてみる。ごくたまに直売のひとが「このひとのがおいしいよ」と耳打ちしてくれることもある。とはいえ、味覚はひとそれぞれ、なにがおいしいと感じるかは人によって違うので、あくまで参考にとどめて。わたしのすいか規準は「食後にのどがいがいがしないこと」「甘すぎないこと」「味に透明感があること」。
さてすいかを買ってきたらどう食べるか。屋外であれば(海・川・山・畑)、持参するのは4つ。まな板、包丁、お盆、ばけつ。まな板は家を出るときには、荷物をできるだけ少なくしたい心理とあいまって、「なくてもいいか」と思いがちだが、いざ切るときにごろごろころがったり土や砂で汚れたりして、せっかく盛り上がった気分が一気に台無しになる可能性があるのでぜひ持参したい。お盆は切ったすいかを置くためでもあるがむしろ食べ切れなかったすいかを持ち帰るときに重宝する。半分や4分の1だったら伏せるように置けば安定感が出る(なので全部いっぺんに切ってしまわないように)。わたしはインドで買ってきた割れる心配のない大きなステンレス皿を持ってゆく。バケツは食べた後の皮入れ。レジ袋などの方が持ち運びが楽でコンパクトに思われるかもしれないが、いかにも生ごみ、という残念な雰囲気になるのと、野外にはいろいろ鋭いものがあるので袋が破れて汁が漏れるという事態も容易に想像できる。バケツに入れればそのまま持って帰ってきて畑の土にもどせばいい。バケツは子どもが採ったかにや魚をいれたり、最後に水を汲んで手足をあらったりといろいろに使えるので、できれば重ねて2つもっていくのがベスト。
すいかを家で食べるのであれば、断然カット方式で。あらかじめ一口大にすべてカットしてしまうやり方だ。よくある放射状に切る方法だと、一番おいしい中心部を最初の方にに食べることになり、あとは皮に近づくにつれて味がうすくなってゆく…というなんとなく盛り下がるパターンを避けられない。それに対して カット方式は、あらかじめ一口大にカットすることによって、おいしさをランダムに味わうのがねらい。 それにスプーンですくって口に運ぶときになんとなく不安定な感じがしないだろうか(すくうときもなんだかぐらぐらして、それを支えようとした左手が汁で汚れたり、せっかくすくってもスプーンからころげ落ちたり、はたまたすくいとったすいかが口のサイズに対して大きすぎたり。とにかく次々とハードルが現れる) 片手で食べられるコンパクトな三角切りもおいしさの頂点から食べる、という意味では一緒でおすすめしない(ただし屋外ではベストの方法だと思う)
カット方式は、まず、すいかを放射状に切ってから包丁の先で種をざっくり取り除く。完璧でなくてよい。(全部取ろうとするとむしろストレス)一口で食べるときに種が少ないことは食感上の大きなメリットがある。さらに三角に切り、断面から見える種をちょいちょい取り除きながら大きめの一口サイズにカットする。「大きめ」の理由は、できるだけ空気に触れる面が少なくするため。多少大きすぎても大丈夫、フォークにさしているので落ちることなく二口で食べればよい。最大のコツは、なるべくすいかの可食部分にまな板と手を触れさせないこと。まな板のわずかな匂いが決してつかないように(直前ににんにくや玉ねぎを切っていたら悲劇)。手で直接触らないのは果物全般に言えることで、理由はわからないがとにかく触らない方がおいしい。
食べるときはだいたい色で部位がわかるので、色が薄めのあっさりしたところと濃くて甘いところをその瞬間瞬間の気分にあわせて選んで食べる。この食べ方なら、「甘いところは最後に食べる」とか「味の薄い部分と濃い部分を交互に食べる」ということが可能になる。
もしかしたら、ほんとうに一番おいしい食べ方は、こんなことをあれこれ考えずに、放射状(あるいは三角)に切られたスイカをがぶりと食べることなのかもしれないが、ことすいかについてはどうも気になる点が多く、毎夏「よりおいしい食べ方はないものか」と模索し続けている。ちなみにトップの写真は屋外用「屋外用三角切り」です)