柿酢づくり

 柿酢をつくりたい、と思ったのは10年以上前のこと。

 周りにあまり作っている人もいないし、そもそも「柿がありあまるほどある」環境にないと、実現できない。うっすらと柿酢づくりを願いながら7回の引っ越しを繰り返したこの10年間だった。屋移りが多くてとても柿酢どころではない。
 
 高知の山のふもとに住まいを映してもうすぐ5年。秋になると、ほうぼうからいただいた柿を浴びるように食べるようになった。手元にある柿がすこしづつ柔らかくなっていくようすを見る度に、柿酢づくりことが頭をよぎったが、それでもなかなか着手できずにいた。

 きっかけは去年。ある方から柿酢をいただいたことだった。

 瓶につめられた手製の柿酢はまろやか。少しづつ大切につかっていたのが、先日底をついたのだった。そして、手元には持ち上げたらくずれそうなほどに熟れた柿が20個ほど。

「柿酢をつくるなら今だ!」と思い、すぐに「柿酢がいちばんお酢のなかでおいしいと思う」という友人に電話をかけて作り方を聞く。
おおらかな彼女の指示は次の通り。

1.洗わずにへたをとって瓶に入れる(硬い柿は4等分に切る)
2.一日いちどかきまぜる(瓶を抱いてゆする)
3.味見をしておいしかったらできあがり

 洗わないのは皮に酵母が付いているから。汚れが気になるようだったら拭けばよいそう。色々細かいことを聞くと、返事は常に「てきとうよー」と「んー、だいたいでだいじょぶ」といった感じで、かなり上級者向けのアドバイス。

 「適当で大丈夫」のアドバイスやはりすこし心もとない。なにしろ10年越しの挑戦なのだ。ぜったい失敗したくない。
ということで、ネットで調べて概要をつかむ。
参考にしたのは、発酵博士の「小泉武夫食マガジン」


【つくりかた】

1.大きめの瓶を消毒する(熱湯 or 焼酎 or 日光消毒)
2.やわらかくなった柿を「洗わずに」へたをとっていれる。傷んだところは取り除く。(甘柿でも渋柿でもOK)
3.上からお玉などでぎゅっとおさえる
4.紙か布で蓋をして常温におき、一日一回混ぜる
5.2週間くらいたつと強烈な酢の匂いがしてくる!
6.1カ月たったら漉してできあがり

 上の写真は5日経った時点。ややおどろおどろしい状態。でも大丈夫、ふたをはずして瓶をのぞくと発酵のかおりとぷつぷつとしたかわいらしい音がする。

 目につくところに置いて、いちにち一回瓶をゆする。やわらかくなった柿が余っていたら瓶にどんどん足してゆく。わが家で熟れた柿を好んで食べるのは末っ子だけなので、「やわらかくなったら瓶に投入!」が合言葉。この無駄のなさは清々しい!

 作りはじめてから、ちょうど2週間。朝起きると、こんなふうに分離しているのでゆすって混ぜる。年末ごろにはできあがる予定。とはいえ柿酢は熟成することによってよりおいしくなるそう。変化を見ていくのもたのしみにひとつ。はじめての柿酢はどんなあじだろう、と瓶をゆすりながら思う日々。