びわの葉茶

 びわの葉をお茶にするには、 大寒のころ 、すなわちいちばん寒さが厳しいころに摘むのがよいと知りました。山の上の清らかな場所の木から葉をわけていただき、はさみで細かく切って、えびらの上にならべました。このまま数日陰干しします。虫食いの葉はそこだけよけて、煮出してお風呂にいれたところ、なんとも言えない気持ちよさ。翌朝の肌の状態がすこぶるよくなっていて、美容効果があるというのは、なるほど本当なんだ、と思いました。

  ふと思いついて、生葉を煎じて飲んでみたところ、味はあるかなしか、最後にわずかな甘みがのこる程度でしたが、しばらくすると、からだがどきどきするような、ばくばくするようなふしぎな感じになりました。ちょっと違うけれど、エスプレッソを2杯飲んだ時のカフェインの感じにちかいような。もちろん、カフェインは入っていないのです。

  調べてみてもそのような記載はみあたらず、「気のせいかな」とおもっていたところ、そういえば、摘んだばかりの葛の花にお湯を注いで飲んだ時も、味はほとんど感じられないのに、酔うような不思議な感覚があったのを思い出しました。

 野草茶をつくっているといっても、薬効にはあまり興味がなく、調べるのは毒性と禁忌の確認程度。でも、その植物にまつわるあれこれを調べてみると、「鎮静作用がある」とか「整腸作用がある」ということを知るよりも、ずっと興味深い情報に出会うこともあります。

 たとえば、インドの「大涅槃経」という教典には、「ビワの木には、枝や葉、根、茎すべてに大きな薬効があるので、病気の人は手で触れたり、香りをかいだり、舌でなめることによって、すべての病苦を治す。」と書いてあるとか。「すべての病苦を治す」なんて、現代人としてはまさか!とは思いますが、もしかして、いにしえのひとびとにとって、「幅広く」とか「たくさん」という意味は、「すべて」でという言葉であらわされていたのかもしれません。

 いずれにしても、 科学的に明らかになっている薬効と、まだそうと知られていない効果の両方があるような気がしています。そして、まだ知られていない領域のほうがむしろ広大なのかもしれない、と。 体感は、いつだって知識を飛び超えるのです。そんなことを考えながら、今夜も枇杷の葉をひとつかみ鍋に放り込んで、ストーブの上で煎じて、お風呂に入るのが楽しみです。