2021/1/10
カレンダーは必需品。仕事とプライベート、さらにこども3人分の学校予定を書き込むので、それなしでは日常が立ちゆかない。
重視するポイントは「いかに見やすいか」そして「書き込みスペースが十分にあるか」。日々目に入るものなので、デザインはシンプルでうつくしいものがいい。
以前愛用していたのは、友人が「これ、いいとおもって」と送ってくれた、葛西薫デザインのもの。
使いやすく、また目にもすがすがしく、たいそう気に入って使っていた。が、近場に入手できる場所がなく、ショッピングも不得手。しかしカレンダーはどうしても必要。さてどうしたことか…と考えていた。
そんなある日のこと。ふらふらと最寄りの本屋に入ると、入り口の右手にカレンダーコーナーを発見。
「どうせ気に入るのはないだろうけど、一応見てみよう」と吊るされたカレンダーをはじから眺めながら「お!」と心をつかまれたのがこちら。白川静の漢字暦。
シンプルかつ堂々としたデザインに攻めの姿勢と「これでいくのだ」という信念を感じる。毎月テーマがあって、それにまつわる漢字の甲骨文字(たぶん)と、成り立ちの説明がつづられている。
たとえば「星」という文字の説明はつぎのとおり。
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「甲骨文の字形は古文に近く、晶に生声を加えた字で、形声。晶は列星の象」
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生声?形声? 列星の象 ?
漢字学の知識がぜんぜんないので意味がわからない。が、それもなんだかいい感じ。
開いて1ページ目には白川静の巨大な写真とともに、著作『漢字の体系』からの抜粋。
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甲骨文には自然界の活動が
神話的な事実として語られており、
女性の虹が黄河に首を垂れて、
水を飲んだというような記述が、
事実の記録として記されている。
地上はまだ神々の活躍する神話の時代であった。
その世界での事実は、
神話的な事実として認識されていた。
(中略)
このような神話的的世界に対応する地上の生活には、
呪術のみが可能な唯一の方法であった。
存在するものには、すべて呪的な力がある。
すべてが意味的な世界である。
文字はこのような世界認識のもとに生まれた。
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時空を超えたスケール感に圧倒されるばかりであるが、
混沌を極め、先行きの見えぬ「いま」だからこそ
神話の時代のエッセンスに魅かれるのかもしれない。
古代の文字は神秘的かつデザインとしてもうつくしい。
白川静の著作を読んだことはないが、大学時代のゼミの先生が、「外国のものより、日本のいいものを読んだら?たとえば白川静とか」とおっしゃったことが、23年たった今も忘れられない(そしていまだに読んでいない)。
そんなことをなつかしく思い出しながら、
ひらいた1月のカレンダーのテーマは「天象(てんしょう)」
月のかたちは三日月。
まんなかの点は、
「実体のあること」を示しているという。
この暦に勇気を得ながら
あたらしい一年をすごしてゆこう。