南インドカレー

 お客さんを迎えたある日、ひょんなことから南インドカレーを一緒に作ることになった。自宅で週に一度だけ開いている「水曜カフェ」では毎週インドカレーを出している。

 蒸し暑い高知の気候は、南インドに近い。さらさらとした酸味のあるカレーは、消化もよくて、いくらでも食べられる。4月のはじめからカフェはしばらくお休みしていたので、ひさしぶりにスパイスボックスのふたをあけた。

 ラッサムは黒胡椒ベースの薬膳カレー。南インドではスープとしての位置づけだが、日本人の考える「スープ」ともちょっと違う。わたしはご飯にかけてカレーとして食べるのがしっくりくると思う。

 スパイスとトマト、玉ねぎ、カレーリーフをブレンダーにかけて粗いペーストにする。それと一緒に、ひきわりレンズ豆を茹でたものと、米のとぎ汁、タマリンド、つぶした皮ごとのにんにく、テンパリングオイル(熱した油にホールスパイスとカレーリーフを投入して香りを出したもの)を入れて、火にかけて沸騰直前で止める。びしゃびしゃの、スパイスの香りが存分に生かされた、短時間でつくる勢いのある一番好きなカレー。食欲が落ちがちな夏であっても、毎日でも食べられる。

 ポリヤルは南インドの野菜や豆のスパイス炒め。北ではサブジと呼ぶ。「おかず」くらいの意味だと思う。野菜はなんでもいい。今回はたくさんあったビーツを下ゆでしてから使った。あざやかな色彩がインドにぴったり。

 フライパンに油を多めに注ぎ赤唐辛子を入れて火にかける。十分に熱した油にマスタードシードを入れ、パチパチと弾けさせたらウラドダールという小さくて白い豆を入れ、カレーリーフを最後に投入。数秒単位で手早く行わないと焦げてしまうので、最大限の集中力をもって行う。刻んだ野菜を入れて炒め、塩で味付けをする。

いずれも南インドに住んでいた時、アパートの上の階のマーラティという女性に教わった料理。アチャール(南インドのスパイシーな漬物)やヨーグルトを添えて、これらすべてを混ぜながら食べると、世にも不思議なおいしさが生まれる。

  お皿の上にはターメリックの葉をのせる。インドではバナナの葉だけれどさすがに手に入らないので代用したのがはじまりだったが、大きさも香りもよく、「これはパーフェクト!」と育てるようになった。食べ終わった後は葉っぱをそのまま土に返せばよいので、洗いものも楽で水を汚さない。なにより、フレッシュな緑の葉っぱの上にのせて食べると、同じものでもおいしさが違う。スプーンのあたりがやわらかなのもいい。

 そんなこともあって、今年はターメリックを熱心に植え付けた。わたしの畑と料理はこんな風にもつながっている。カレーの夏も、すぐそこ。