2020/7/22
月にいちど、新月の日にお茶会をひらいている。お茶会、といっても作法のあるものではなく、お茶とお菓子をたのしみながらおしゃべりをする、という気楽な会。
開催は新月の日時にあわせるので、曜日も時間も毎月異なる。とはいえ真夜中に集まるわけにもいかないので、ジャスト新月が夜中の場合には、時間をずらしてひらく。今回はまだ外があかるい18時から。食事の時間にかかるので、軽い食事を用意した。
今回はかぼちゃの冷たいスープ、ビーツのマリネ、それからライスサラダ。
しばらく置いてあった大きなかぼちゃのつるの部分が傷み始めたのを発見したので、慌てて切り分けた。さて、どうしよう。かぼちゃは夏が旬だが、あのちょっとのどに詰まる感じはこの湿度と気温に不向きな気がする。でも、冷たいスープだったら、すんなり喉を通るだろう。
まず、皮をざっくりとむく。皮には栄養があるのでむいてしまうのがためらわれるが、しかしスープは鮮やかな黄色に仕上げたい、小さめの一口大に切り、鍋に入れて塩をまぶしてすこしおく。この行程で、かぼちゃの雑味(ほんのわずか生臭い感じ)が解消される。
しばらくおくと水分がでてくるので、鍋にいれて中火にかけ、乾煎りして水分を飛ばす。人参もこの方法で「人参臭さ」と言われるものを消すことができる。くれぐれも焦がさぬように。
なべ底がからりとしてきたら水をかぶるほど入れて、塩を加え、中弱火にで時間をかけて火を入れる。急いでいれば強火にするが、時間をかけて火入れをした方が、芯の定まった味になる気がする。
家族の食事用であれば、好きなだけおかわりができるように、水と塩だけで素朴なスープにするところだが、今日はすこし趣向を変えて、バターをひとかけら落とす。このひとかけらが香りに劇的な効果を生む。
すっかりかぼちゃがやわかくなったらブレンダーにかけて鍋にもどす。牛乳を好みのこくとほどよいとろみになるほどに加え(牛乳が足りなければ水)、塩味を決め、水を張ったボウルに入れて粗熱をとり、冷やしておく。バターや牛乳を入れた時は、黒胡椒を食べるときにふるとバランスがとれる。
ビーツは丸ごと茹でて、冷ましてから皮をむく。切り方は自由だが、今回はくし切りに。オリーブオイルを全体にまとわせ、塩、シェリービネガー、みょうがの甘酢漬けでマリネし、よく冷やしておく。オリーブオイルは一番味の決め手となる調味料なので、質の良いものをたっぷりとつかう。なじむと味が変化するので(薄くなる)、食べる前にもう一度味をみて、塩味、酸味を調整する。
ライスサラダは夏にぴったり。残りごはんをよくほぐし、オリーブオイルをまとわせ、ビネガー(酢でもレモンでも)、塩で軽く味をつけておく。赤玉ねぎはみじん切りにして梅酢とビネガーを加えてざっと混ぜ、しばらく置いておく。その間に甘唐辛子(今回は伏見甘長。ピーマンでもししとうでもよい)の種をのぞき、みじん切りにする。赤玉ねぎをしぼり、甘唐辛子とともにごはんに混ぜる。
畑でイタリアンパセリが勢いよく育っていたので、一束を茎ごと細かに刻んでたっぷり混ぜ入れる。パセリは「風味付け」的扱いを受けることが多いが、料理によってはむしろ臆せずに「たくさんつかう」ことが大事だと思う。ハーブ、というよりも野菜に近いイメージで。
白いお皿の上に、ターメリックの葉を敷いた上に盛りつける。こうすると、上にのせたスープの器が運ぶ時にすべらず、洗いものも楽になる。それから冷蔵庫にひとかけら残っていたカンパーニュを薄く切って、網で焼いて添えた。
いずれも家にあった野菜でつくった簡素な料理。そのときたまたま手元にある野菜とともに、その日の気候や気分にそって手を進めていくと、とにかく気分がいい。
料理をお出しする日は、時間配分や全体のバランスなどをあらかじめ考えて、「これをつくろう」と一応は決めるのだが、野菜を洗い、まな板を出すころには、全然違うことをやりたくなってしまう。毎回この調子なので、予定が実現されることはほとんどない(ちなみに今回は茗荷の甘酢漬けと錦糸卵で夏のちらし寿司を作ろうと思っていた)。
不思議なのは、まったく無計画で作り始めるときよりも、「これをつくろう」と思っていて、「やっぱりやめた」と別のものを作る方が、自然に良い流れが生まれること。なので、予定や計画、は決して無駄ではないのだ。
この日のデザートは、「杏シロップとヴェルヴェーヌのジュレ、メロンのスパイスマリネを添えて」。わたしはデザートをつくらないので、我が家のお菓子担当の夫が作る。
白いお皿に、ひんやりとした琥珀色のゼリーとみずみずしい果実。食べ終わる頃には日が落ちて、外の空気がひんやりとしはじめていた。