北の果てから鮭

網走の友人から、季節ごとに小包が届く。
箱をひらくとフレッシュな土地の産物に手製のお菓子やパン、それから手紙が入っていて、毎回心おどらせながら箱をひらく。 こちらも高知のあれこれを小包にして送る。 北海道と高知で行き交う「小包文通」。

9月には鮭が届いた。「今回は雌です!お腹も出さずにそのまま送りました」というメッセージはつまり「いくらが入っています」ということ。

聞けばご家族が釣った直後の鮭を、すぐに冷凍便で送ってくれたとか。お礼の電話をかけると「これまでで一番新鮮だと思います!」とはずむ声で教えてくれた。

特別支援学校に通う高2の息子は大の魚好き。「秋鮭、去年よりも少し早いね。いくらがきちんと成熟しているか…」とつぶやきながら、ひらいたお腹にぎっしりのいくらを目にして歓声をあげた。

さばいたその夜は、骨まわりの身を焼いてほぐして「鮭のおむすび」。翌日は、いくらの醤油漬けどんぶり。身の部分はすべてスモークサーモンに。

スモークサーモンの作り方:
鮭の切り身に4%の塩と2%の砂糖、胡椒をまぶして一日おき、表面を水で洗い流してから網に乗せて冷蔵庫で乾燥させる。桜の枝などで数時間燻し、冷蔵庫で1日熟成させればできあがり。

天然の鮭にはアニサキスがいる可能性があるので、鮮度の良さと、冷凍で数日置いてあることが条件。それでも「大丈夫かな…」毎回すこしどきどきしながら食べる。

1週間かけてできあがったスモークサーモン。そのまま食べたり、サンドイッチにしたり。息子はことあるごとに「スモークサーモン食べていい?」と聞いてくる。

さんざん楽しんだ後の、最後のスモークサーモンは、平日の昼間にパスタにした。玉葱としめじ、ローリエを炒め、ゆであがったパスタを入れてスモークサーモンを加える。すだちを絞り、生の玉葱のスライスをのせ、黒胡椒は多めに。

鮭一匹の最後のひとさら。
秋になると北の果てから届く鮭。いそいでさばいて、できるだけ保存のきくようにして、数週間かけて食べ続ける。そのプロセス自体が喜びなのだと、やっぱり今年もおもったのだった。